2005年05月13日

中世ってこんな楽しい時代だったの?

タイトル:聖女の遺骨求む
著  者:エリス・ピータース
出版社 :光文社文庫

12世紀、内乱に揺れるイングランドの修道院を舞台としたミステリー。中世の修道院というとすぐ「薔薇の名前」が浮かぶけど、哲学や神学をテーマとするわけでもなく、まったく難解なところはなく、ラクラク読める。この時代の生活(料理や衣類など)がていねいに描かれ、中世の暗黒のイメージが一変する。人間的な、つまりごく当たり前の欲望や感情を持ち、自分の役割に懸命な人たち(もちろんヘンなやつも)が次々現れ、とにかく楽しい。

主人公は、かつて十字軍の兵士として聖地に赴き戦ったブラザー・カドフェル。旅と冒険の日々を堪能した後、中年になってから修道院に。薬草を育て、病人を癒す役割を得ているが、持ち前の好奇心と行動力はいまだ衰えず、ことが起こればすぐに手を出さずにいられないというシニアの星。日頃は薬草園の手入れなんかやっているものの、外に出る機会は逃さない、というか、こっそり出て行くのもしばしば。

この「聖女の遺骨求む」は、出世欲に駆られた副院長に率いられ、ウエールズの草深い田舎にひっそり眠る聖女の遺骨を掘り出しに行くことに(これって、墓荒らし?)なるというシリーズ第1作。そこで、神の啓示を受けたと主張する修道士やら、村娘と恋に落ちる見習いやら、傲慢で単純な副院長やら、頑固な村の実力者やら入り乱れ…。

長編20作+短編集1作。もともとこのシリーズは社会思想社の現代教養文庫から出ていたもので、社会思想社が倒産して版権が光文社に移動、現在続々と発行されている。

シリーズ中、「秘跡」は文句なしの★★★★★。ミステリーに恋愛はタブーなんて、旧式のお約束もなんのその。恋愛そのものが謎の骨格となるというアイデア勝利の傑作。読んでほしいからあえてストーリーには触れないけど、嗚咽ものの感動が待ち受ける。シリーズを通しで読まなくても、この一冊は是非!

全般的にはずれが少ない、クオリティの高いシリーズ。「死への婚礼」「氷のなかの処女」「聖なる泥棒」もいい。「歴史ものはあまり…」という方は、2作目の「死体が多すぎる」★★★★から入ることをおすすめ。

おすすめ星(5段階)★★★★


posted by gsks at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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