2006年01月25日

ストーリーそのものがトリック

クリスティーの「ナイルに死す」と坂口安吾の「不連続殺人事件」。ミステリー好きにはおなじみの傑作。

どちらも泥沼の恋愛をストーリーのベースとし、メイントリックも同じ。どちらも小技に時間差トリックなんか使っているが、ベースとなるトリックはあまりにシンプル。下手なやつが真似したら一発でバレそうな、ある意味きわどいネタともいえる。だが、最後までそれを察知させないのが両巨匠の筆力というものか。

坂口安吾は、太宰治などと並ぶ無頼派の作家。「不連続殺人事件」は、戦後の混乱期を舞台に奇人変人揃いの作家・文人が山奥の山荘に集まり、醜悪怪奇な人間関係を展開するうちに次々殺人が起こるという趣向。戦時中の疎開や戦後の食糧不足など時代背景が濃厚なあまり、なかなか読まれないのは残念。いわゆる安吾調の文章は時代がかって感じられるが、ところどころ普遍的で色褪せないものがきらめいている。

これに対し、クリスティーの「ナイルに死す」は映画化されて、いたってポピュラーな作品。ナイル川クルーズを舞台としたトラベルミステリーの趣きもある。旦那さんが考古学者だった関係からか、中近東を舞台とした作品は楽しいものが多い。

「ナイルに死す」と「不連続殺人事件」に共通するフレームを使って、最後までバレずに読ませきる作品って他にないのだろうか。あるなら、ぜひ読んでみたい。
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2005年10月03日

ano あのルビオが帰ってきた!!

タイトル:鉤爪の収穫
著  者:エリック・ガルシア
出版社 :ヴィレッジブックス

恐竜探偵ルビオの第3弾!!
これまでチャンドラーばりのタイトルがハメット風になって、
ストーリーもちょいとハメット調。
ハードボイルドの王道を行く恐竜ミステリーです。

恐竜マフィアのボスに、嫌々ながら雇われることとなったルビオ。
ハーブ中毒により財政上はかなりのピンチ!
それなのに前金もらって、かの高級デパート「ノードストローム」の
セールでアルマーニに手を出してしまうあたり、
やっぱり困ったヤツ。でも、かわいいぜ。

そんなわけで対立マフィアを探りに行ったマイアミで、
幼馴染とその妹に再会。
しかも対立マフィアのボスが幼馴染であることがわかり、
二つの組織を行ったり来たりという状態。

抗争が起こり、幼馴染が殺され、
ルビオの初恋の相手である妹が組織を率いていくことに…。
どうするの?どうするの?ルビオ?

う〜ん、非情なストーリー展開もハメット的かも。

それにしてもずっと待っていたので会えてうれしかった!!
ソニーマガジンズさん、ありがとう!
ということで、★★★★




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2005年08月13日

疲れた心を笑い飛ばしてしまいたいときに…

タイトル: 「私が愛したリボルバー」以下、ステファニー・プラム・シリーズ
著  者: ジャネット・イヴァノヴィッチ
出版社 :扶桑社ミステリー

昔まだ子どもの頃、夕方になっても遊んでいると「人さらいにさらわれるよ」なんて風に大人に叱られた頃、自転車で物を売るおじさんが淋しげな音色の笛を鳴らしていた頃。
弟がしょんぼりして「カブト虫になりたい…」なんて、ポツリと言った。きっと、友達と喧嘩したり、テストの点数が悪かったり、そんなことだったのだろうけれど、大人になって鉄の仮面かぶって生きていると、時々「カブト虫になりたい…」なんて独り言、ふと思い出す。

疲れて、疲れて、明日のことも考えたくないとき。カブト虫になれない私は、クリームどっちゃりのケーキやマロングラッセと、この一冊。

ヒロインのステファニー・プラムはバウンティ・ハンター。法廷に出頭しなかった犯罪者を法の枠の中に連れ戻す逃亡者逮捕請負人という、いかにもアメリカ的なお仕事。もともとは、スケスケパンティなんかを扱うランジェリーバイヤーだった彼女、突然のリストラで家賃の支払いにも困って、やっとありついた仕事がバウンティ・ハンターだった。

Hっぽいランジェリーを扱っていた女が、筋肉ムキムキで脳みそのしわが消えちゃったような男と渡り合えるはずもなく、お仕事はいつも悪戦苦闘、しかもあまり学習能力のあるタイプじゃないので…。もうぅぅぅ、大変。

でも、彼女の強みは、異常なほど悪運が強いこととしつこいこと。逃亡者と偶然出くわすなんて朝飯前。挙句の果てに、怒った逃亡者がわざわざ彼女の部屋までやってくる(?)ほど。そして、もうひとつ。イカした男に恵まれていること。

しかも、二人も。んまあ!

一人は幼馴染でロストバージンの相手であるジョー・モレリ。茶色の瞳で、チョコレートみたいにとろけそうなんだとか。もう一人は、バウンティ・ハンターの師でもある通称レンジャー。危険な香りの元傭兵。シリーズが進むに連れて、モレリとの仲が再燃したり、レンジャーが迫ってきたり。
「二人の男の引力にゆらゆら揺れて…」これってけっこう女の好きなシチュエーション。

ハチャメチャなストーリーにあきれたり、笑ったり。一見無意味なエピソードの羅列のようなストーリーもラストではすべてスッキリするから不思議。ちゃんとミステリーやってるから、これってけっこうすごいことよね?

とにかく、何にも考えずに「ガハハハ」と笑っているうちに、カブト虫願望はかき消えてしまう。寂しさも、不安も、空しさも(少なくとも、その夜は)。

それにしてもこの小説、むやみやたらとお菓子が登場する。月経前症候群対策としてステファニーが食べまくるジャンクな箱入りのお菓子類といい、ステファニーの母親が作る手作りデザートといい、とにかく甘いものがほしくなる小説。

ステファニーの母親が作るデザートに「パイナップルのさかさまケーキ」というのがしばしば登場するのだけれど、いったいどういうケーキなのか?具体的な描写は皆無。誰か、教えてください!!

ただし、一冊目の「私が愛したリボルバー」って邦題はいただけない(翻訳物にはありがちですが、ぜんぜん中身とあってない)。本屋さんの棚の前で、「こんなタイトルの本がおもしろかったためしがない」とかなり逡巡した。結局、おいしそうな匂いにつられて買ったけど。その後、軌道修正してタイトルもおいしそう。

おすすめ星(5段階)★★★★

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2005年06月25日

名画の迷路に迷い込んでみるのも

タイトル:偽りの名画
著  者:アーロン・エルキンス
出版社 :ハヤカワ文庫

美術館の学芸員クリス・ノーグレンを主人公としたアートミステリー。骨探偵で知られるエルキンズの別シリーズだが、骨探偵の鼻持ちならなさ(はっきり言ってウンチクおやじ)にへきへきしている方にも、主人公のノリの軽さとおまぬけさはお楽しみいただけるはず。

さまざまな名画をテーマとしたアートミステリーや特定の時代を舞台とした歴史ミステリーが大好物で、その手のものにはすぐ手が出てしまう(ただし、例の××コードは読んでいない)。歴史ミステリーは、密偵ファルコのシリーズ(光文社文庫)や以前ここでも紹介したブラザー・カドフェルのシリーズなど大好きなものが多い。

ところが、アートミステリーはなかなか好みに合ったものが少ない。一般的な評価とは異なるのだろうが、押し付けがましい衒学趣味がまずイヤ。ミステリーとしての骨格が不十分に感じられることも。

それに名画そのものと謎が直接結びついているものは意外と少なく、こじつけ?といいたくなるような作品も。でも、このシリーズは花丸付きのお気に入り。謎は魅力的だし、知識のちらつかせ方もスマート。とにかく、〈大げさ・大上段・押し付け〉のイヤミ3要素がない。
つまり「どうだ、俺はすごいだろ」と言いたいだけで読者を回り道させる、原稿の枚数稼ぎ&勿体つけがない。これはけっこう素晴らしいこと。

妻と離婚係争中(つまり、財産分与や慰謝料の額を決める条件闘争)の主人公クリスは絶不調。見かねた館長の計らいで、第二次大戦中ナチスが略奪した名画の展覧会開催のためにドイツに行くことに。
しかし、ドイツでは一日に二回ワイシャツを着替えるほど潔癖で、すべてが貴族的な上司が「この中に贋作がある」と言い残し、謎の死を。それは、売春婦を連れてうらぶれた路地裏の、いかがわしいホテルにチェックインし、部屋の窓から墜落するという、およそ男にとって最悪のパターン。
贋作をつきとめることが、上司の死の解明につながると調査に乗り出すクリスだったが、自分も銃で狙われたり、爆弾を仕掛けられたり、ミケランジェロの絵で殴られたりと散々。
贋作と疑わしき絵は、ティッツィアーノ、フェルメール、エルグレコ、デューラー、フランチェスカ、モネ、コロー…豪華ラインナップ。名画の作り出す迷路に迷い込んで、謎は深まる一方。

好きな画家ばかりで、わくわくしちゃうんですけど。

読後は意外性に打たれ、猛烈に絵が見たくなってしまう。このシリーズは、ルーベンスの絵の盗難事件を扱った「一瞬の光」★★★★、レンブラントの絵の真贋をテーマとした「画商の罠」(★★★★)の計3作品。いずれもハイレベル、はずれなし。

おすすめ星(5段階)★★★★
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2005年06月24日

戦えよ、難破する前に

タイトル:死ぬには遅すぎる
著  者:クリストファー・ムーア
出版社 :講談社文庫

タイのバンコクを拠点に活動する私立探偵カルヴィノを主人公とするハードボイルド。ユニークなミステリーを探している人におすすめ。

それにしても、どうして欧米人の男というのはアジアで難破して動けなくなってしまうのか(もっとも、日本人も相当多いようですが)。きっと魅力があるのでしょうね、物価の安さ、女の安さ、愛の安さ。

先進国というのはさまざまな側面で格差が見えやすくなっているから、争いたくないというより、負けた姿を見られたくないというニーズが生まれたのかも。その行き先が東南アジアなのかも。でも、勝とうが負けようが、女にとって大切なのは戦う男の懸命な姿なのだけれど。だから、愛人にされた女はみんな不幸そうで、完全あきらめモード。

アジア人の女を愛人にして、とりあえず周りにいるアジア人より上だぜ、と満足している白人男の姿は、ぞっとするほど醜い(どうも冷静になれない。ローマ・カソリックが作り上げた「白人・男・上位主義」の無意識な視点を感じ取ってしまっているよう)。

主人公をはじめ帰れない男たちがうようよ。その姿は、波に洗われ朽ちていく難破船そのもの。恋人の日本人女性、秘書のタイ人女性を彼なりに理解しているつもりなのだけれど…。その理解はいまだステレオ・タイプの範疇(基本的に理解力なさすぎ)。

以上、ちっともおすすめしていない内容になってしまった。

ストーリーは、ニューヨーク育ちの元弁護士が、UNTAC統治下のカンボジアで人探しをするというもので、ミステリーとしては趣向が変わっておもしろい。シリーズで、「最後の儀式」★★★がある。タイの風情を生かした趣向はなかなか。

おすすめ星(五段階)★★★
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2005年06月23日

しんどい毎日に疲れたら、心にやさしい味わい

タイトル:御書物同心日記(おしょもつどうしんにっき)
著  者:出久根 達郎
出版社 :講談社文庫

江戸時代、天下の稀本・珍本が集められた将軍家の御文庫に勤める青年が主人公の連作短編集。

江戸時代というのは、とにかく何ごとも平穏無事に、波風立てず、異を唱えず、隣と同じこと、同じ顔をして世を渡っていくのが、基本的生き方、あるべき姿とされていた時代だ。それによって、個々はそれぞれの家を保ち、徳川家の政権を維持存続させるという体制コンセプトだったからである。

(この体制コンセプトは途切れたようで途切れず、今も多くの日本人に受け継がれている。それに対し、常に自覚的な進歩や向上を自分に課し、しかも声にして周囲にも絶えず要求するサッカーの中田英寿は、この綿々と続く「平和主義的・予定調和」DNAから解放された日本人だと思う。)

それゆえ、この図書館勤めの青年の周囲には、度外れた不幸も運命に翻弄される悲劇も激しい恋も起こらない。

ネズミにちぎられた本の切れ端を集めて、来る日も来る日も接ぎ合わせをしたり、湿気を取るために本を風に当てながら鳥のフンが落ちてこないか見張ったり。そんな仕事を苦にすることなく、本に触れられるのが何よりうれしいというのが本書の主人公。仕事が終われば、そそくさと古本屋に出かけてしまう根っからの本好きだ。

この青年をとりまく本と人から生じる、ささやかな謎や出来事が次々と繰り広げられる。平穏無事な時代は、けっこう奇人変人が生まれやすいのかもしれない。奇妙なことに喜びを感じてしまう人間の性や、ささやかで哀しい人の願いが、小さな謎を生み、静かな波紋を広げてゆく。特にドラマチックな展開にはならないし、どこにも力みがないにもかかわらず、読む者を極上の物語世界に引き込んでしまう「小説の引力」はかなりのもの。こういうことが、作家の力量というものなのか。

競ったり、争ったり。ギスギスした毎日にほとほと疲れたとき、心にもおかゆを食べさせたいとき、読みたい一冊。

勝ち組・負け組みと色分けしたがり、些細な点をあげつらって他と差別化して、自己満足のタネを拾って歩かなければならない現在と比べると、うらやましいのか、あほらしいのか悩んでしまうほど牧歌的な世界だ。

ところで、勝ち組・負け組みの語源だが、これは第二次大戦終結時にアメリカ大陸に移民した日系人の間で、「日本が勝った」と主張する派=勝ち組、「日本が負けた」と主張する派=負け組、二つに別れ対立したことから生まれた言葉である。

本来の意味が忘れられ、「経済的成功」=勝ち組と称されるようになったのだが、真実の存在に関わらず、自分の信じたいこと、あるいは自分そのものを真実と考える人を、勝ち組というなら、それもまた真なりといえるのかもしれない。

続編に、「続 御書物同心日記」★★★★、「御書物同心日記 虫姫」★★★★がある。

おすすめ星(5段階)★★★★
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2005年05月16日

カッコいい探偵小説が読みたくなったら

友達が夫の浮気を疑いだした。けれど、すべて状況証拠ばかりで、問い詰めても「まったく、ありえない」と全否定(どんな証拠つかまれても決して認めないというのが男の法則か?)。そこで彼女、探偵というか、調査員というかを雇って、休みの日に出かけた夫をツケさせた。電車を発車間際に飛び降りるという玄人はだしのワザ(この夫、ただ者じゃない…)で、その探偵はあっけなくまかれてしまったのだとか。本当に探偵だったのだろうか…。現実の探偵って、この程度? 探偵はミステリーで出会うもの?
そこで、自分が探偵を雇うなら、こんな探偵を雇いたいと思わせるミステリーが「偽りの街」のベルンハルト・グンター。ただし、夫の浮気調査には向きません、だって決して知りたくないことまで探り出してきそうだもの(実はオッパイ・フェチだとか…)。

タイトル:偽りの街
著  者:フィリップ・カー
出版社 :新潮文庫

ナチスが支配する、第二次世界大戦直前のベルリンを舞台としたミステリー。ベルリン・オリンピックを間近に控え、華やぎと高揚、そして破滅の予感が街を埋めてゆく。どうしようもなく退廃的で、危険に満ちて、誰もが神経をぴりぴりさせながら平静を装う、神経症寸前のベルリンの表情は魅惑的で心ひかれる。登場人物は誰もが一癖どころか三癖も四癖もありそう、ひねくれ気味で、それでいて都会的。

「偽りの街」は、元刑事の私立探偵グンターが放火殺人事件の謎を追うハードボイルド。どんでん返しあり、続編へと続く女性問題ありと盛り沢山。連続美少女殺人犯を追う「砕かれた夜」★★★★はユダヤ人弾圧の契機となったクリスタル・ナハトを背景に、かつて追われた警察に復職したグンターの警察小説。「ベルリン・レクイエム」★★★★は、敗戦によって分割統治されるベルリンにうごめくスパイやナチの残党と渡り合うグンターを描くスパイミステリー。カーはとにかく芸達者。シリーズ3作をそれぞれのテイストで描きあげている。もっとも他の作品は、このベルリン・シリーズほど完成度が高くないように思えるのだが…。

おすすめ星(5段階)★★★★
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2005年05月13日

中世ってこんな楽しい時代だったの?

タイトル:聖女の遺骨求む
著  者:エリス・ピータース
出版社 :光文社文庫

12世紀、内乱に揺れるイングランドの修道院を舞台としたミステリー。中世の修道院というとすぐ「薔薇の名前」が浮かぶけど、哲学や神学をテーマとするわけでもなく、まったく難解なところはなく、ラクラク読める。この時代の生活(料理や衣類など)がていねいに描かれ、中世の暗黒のイメージが一変する。人間的な、つまりごく当たり前の欲望や感情を持ち、自分の役割に懸命な人たち(もちろんヘンなやつも)が次々現れ、とにかく楽しい。

主人公は、かつて十字軍の兵士として聖地に赴き戦ったブラザー・カドフェル。旅と冒険の日々を堪能した後、中年になってから修道院に。薬草を育て、病人を癒す役割を得ているが、持ち前の好奇心と行動力はいまだ衰えず、ことが起こればすぐに手を出さずにいられないというシニアの星。日頃は薬草園の手入れなんかやっているものの、外に出る機会は逃さない、というか、こっそり出て行くのもしばしば。

この「聖女の遺骨求む」は、出世欲に駆られた副院長に率いられ、ウエールズの草深い田舎にひっそり眠る聖女の遺骨を掘り出しに行くことに(これって、墓荒らし?)なるというシリーズ第1作。そこで、神の啓示を受けたと主張する修道士やら、村娘と恋に落ちる見習いやら、傲慢で単純な副院長やら、頑固な村の実力者やら入り乱れ…。

長編20作+短編集1作。もともとこのシリーズは社会思想社の現代教養文庫から出ていたもので、社会思想社が倒産して版権が光文社に移動、現在続々と発行されている。

シリーズ中、「秘跡」は文句なしの★★★★★。ミステリーに恋愛はタブーなんて、旧式のお約束もなんのその。恋愛そのものが謎の骨格となるというアイデア勝利の傑作。読んでほしいからあえてストーリーには触れないけど、嗚咽ものの感動が待ち受ける。シリーズを通しで読まなくても、この一冊は是非!

全般的にはずれが少ない、クオリティの高いシリーズ。「死への婚礼」「氷のなかの処女」「聖なる泥棒」もいい。「歴史ものはあまり…」という方は、2作目の「死体が多すぎる」★★★★から入ることをおすすめ。

おすすめ星(5段階)★★★★


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2005年05月12日

“美女で天才”しかもサイコパスのハッカー!

タイトル:氷の天使
著  者:キャロル・オコンネル
出版社 :創元推理文庫

元ストリート・チュルドレンで天才的な頭脳を持つ、美貌のマロリー。でも、その心は善悪を判断できないサイコパスにして、ハッカー。それなのに、養父がニューヨーク市警の警視だったことから、自分も警官。というハチャメチャな設定。

文章はわかりにくく、紗のベールを何枚も通して景色を眺めているよう(あえて、そういう文体を採用しているらしいが)。そこで描き出されるマロリーの姿は魅惑的、事件の謎(老女連続殺人を追っていたマロリーの養父まで殺されてしまった)よりもずっと深い謎を秘めた主人公。なぜ老女ばかりが次々と殺されていくのか、唯々諾々と犯人におびき出されていくのか?その謎に魅せられ、事件を追うマロリー。読み進めるほどに、物語世界に引きずり込まれる、すごいパワーのある作品。

でも、美しくなければ、周囲に愛されないし、助けてもらえないのはミステリーならずとも人生の真実(らしい、あまり認めたかないが)。はっきり言って、本当に人の気持ちがわからなくて人に愛されるものなの?とちょっと意地悪く考えたくもなる…。

1作目の「氷の天使」と2作目の「アマンダの影」★★★★はもともと竹書房から「マロリーの神託」「二つの影」として出版されたもの。創元推理文庫に移って再出版され、さらに「死のオブジェ」★★★★「天使の帰郷」★★★★と続く。事件の謎とともに、なぜマロリーがストリート・チュルドレンにならなければいけなかったのかというマロリー個人の謎もシリーズとともに進展し、「天使の帰郷」で明らかとなる。

オコンネルはとにかくすごい。というか、比類なき心のあり方を表現できる、オリジナリティの高い作家。他に作品は、「クリスマスに少女は還る」★★★★★がある。おぞましい変質者に誘拐された二人の少女のサバイバルストーリー。文句なしの傑作、最後に体が震えるほどの感動が待ち受ける。

おすすめ星(5段階)★★★★

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2005年05月11日

これは、“おバカ”小説の愛しき傑作かも?

タイトル:さらば、愛しき鉤爪
著  者: エリック・ガルシア
出版社 :ヴィレッジブックス

とにかく超おバカである。超おバカすぎて、星を5つつけたいくらい。なにしろ、実は恐竜は絶滅していなくて、密かに小型化し、人間の皮をかぶって人間にまぎれて共生しているっていうお話なんだから!それを人間はちっとも気がついていないって設定?!

そして恐竜探偵のルビオが、人間・恐竜入り乱れて繰り広げるドタバタ・ハードボイルド。ドタバタとはいえ、ミステリーとしての骨格は恐竜だけあって実にしっかりしたもの。
恐竜同士を判別するのは、その体臭。草木や花、スパイス、皮、果実などのカクテルで大衆が構成され、香りで個人判別ができちゃうらしい。もちろん、イヤな奴はイヤなにおい(まあ、嗅覚の鈍さは人間の大きな特徴といえるかも)。しかも、恐竜はバジルやマジョラムなんかのハーブでトリップできちゃうらしい。

こういう小説がもっと人気が出たら、日本はいい国、生きやすい国になるのに、とふとしみじみ。(まあ、経済力はどん底まで落ちるだろうけどさ)

恐竜はさておき、ミステリーは上質、お約束の軽口たたきもシニカルでニューモラス。クオリティ高い。でも、重たいテーマの深刻派や、凝りに凝ったトリックの本格派が多くて、なかなかウケないんだよね。ユーモアミステリーとか呼ばれて軽く見られるし…。残念。
シリーズで「鉤爪プレイバック」★★★★もある。未訳の作品があるはずなのに、まだ出ないのは、やはり売れないせい?残念。

おすすめ星(5段階)★★★★
posted by gsks at 00:39| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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