タイトル: 「私が愛したリボルバー」以下、ステファニー・プラム・シリーズ
著 者: ジャネット・イヴァノヴィッチ
出版社 :扶桑社ミステリー
昔まだ子どもの頃、夕方になっても遊んでいると「人さらいにさらわれるよ」なんて風に大人に叱られた頃、自転車で物を売るおじさんが淋しげな音色の笛を鳴らしていた頃。
弟がしょんぼりして「カブト虫になりたい…」なんて、ポツリと言った。きっと、友達と喧嘩したり、テストの点数が悪かったり、そんなことだったのだろうけれど、大人になって鉄の仮面かぶって生きていると、時々「カブト虫になりたい…」なんて独り言、ふと思い出す。
疲れて、疲れて、明日のことも考えたくないとき。カブト虫になれない私は、クリームどっちゃりのケーキやマロングラッセと、この一冊。
ヒロインのステファニー・プラムはバウンティ・ハンター。法廷に出頭しなかった犯罪者を法の枠の中に連れ戻す逃亡者逮捕請負人という、いかにもアメリカ的なお仕事。もともとは、スケスケパンティなんかを扱うランジェリーバイヤーだった彼女、突然のリストラで家賃の支払いにも困って、やっとありついた仕事がバウンティ・ハンターだった。
Hっぽいランジェリーを扱っていた女が、筋肉ムキムキで脳みそのしわが消えちゃったような男と渡り合えるはずもなく、お仕事はいつも悪戦苦闘、しかもあまり学習能力のあるタイプじゃないので…。もうぅぅぅ、大変。
でも、彼女の強みは、異常なほど悪運が強いこととしつこいこと。逃亡者と偶然出くわすなんて朝飯前。挙句の果てに、怒った逃亡者がわざわざ彼女の部屋までやってくる(?)ほど。そして、もうひとつ。イカした男に恵まれていること。
しかも、二人も。んまあ!
一人は幼馴染でロストバージンの相手であるジョー・モレリ。茶色の瞳で、チョコレートみたいにとろけそうなんだとか。もう一人は、バウンティ・ハンターの師でもある通称レンジャー。危険な香りの元傭兵。シリーズが進むに連れて、モレリとの仲が再燃したり、レンジャーが迫ってきたり。
「二人の男の引力にゆらゆら揺れて…」これってけっこう女の好きなシチュエーション。
ハチャメチャなストーリーにあきれたり、笑ったり。一見無意味なエピソードの羅列のようなストーリーもラストではすべてスッキリするから不思議。ちゃんとミステリーやってるから、これってけっこうすごいことよね?
とにかく、何にも考えずに「ガハハハ」と笑っているうちに、カブト虫願望はかき消えてしまう。寂しさも、不安も、空しさも(少なくとも、その夜は)。
それにしてもこの小説、むやみやたらとお菓子が登場する。月経前症候群対策としてステファニーが食べまくるジャンクな箱入りのお菓子類といい、ステファニーの母親が作る手作りデザートといい、とにかく甘いものがほしくなる小説。
ステファニーの母親が作るデザートに「パイナップルのさかさまケーキ」というのがしばしば登場するのだけれど、いったいどういうケーキなのか?具体的な描写は皆無。誰か、教えてください!!
ただし、一冊目の「私が愛したリボルバー」って邦題はいただけない(翻訳物にはありがちですが、ぜんぜん中身とあってない)。本屋さんの棚の前で、「こんなタイトルの本がおもしろかったためしがない」とかなり逡巡した。結局、おいしそうな匂いにつられて買ったけど。その後、軌道修正してタイトルもおいしそう。
おすすめ星(5段階)★★★★